【最大1,300万円】事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠(15次公募)が募集開始
※本記事は2026年5月22日に公開された事業承継・M&A補助金 第15次公募要領(事業承継促進枠)をもとに、行政書士が解説するものです。最新情報・詳細は必ず事業承継・M&A補助金 公式サイトでご確認ください。
はじめに ― 5年以内に親族・従業員へ承継をお考えの経営者の方へ
「息子(娘)に会社を継がせたいが、設備が古くて承継後にやっていけるか不安」「長年勤めてくれた幹部社員に事業を譲りたいが、その前にDX化や生産性向上の投資をしておきたい」
こうしたお悩みを抱える中小企業の経営者の方にとって、強い味方になるのが国(中小企業庁)の「事業承継・M&A補助金 事業承継促進枠」です。第15次公募の公募要領が2026年5月22日に公開され、申請受付は2026年6月19日〜7月24日17:00となっています。
本記事では、行政書士の立場から、事業承継促進枠の制度概要、補助率・上限額、対象経費、申請の流れ、注意点まで、第15次公募要領に沿って分かりやすく解説します。
1. 事業承継促進枠とは ― 制度の概要
事業承継・M&A補助金は、中小企業者等が事業承継またはM&Aに際して行う設備投資等を支援する制度で、複数の枠に分かれています。そのうち「事業承継促進枠」は、親族内承継や従業員承継等の事業承継(事業再生を伴うものを含む)を予定する後継者が中心となって取り組む、生産性向上に資する設備投資等を支援する枠です。
ポイントを整理すると、次のようになります。
- 対象:今後5年以内に親族内承継または従業員承継を予定する中小企業者・個人事業主
- 支援内容:後継者が中心となって取り組む設備投資・店舗改装・ITツール導入などの費用の一部を補助
- 狙い:承継を契機とした生産性向上による地域経済の活性化
なお、M&Aで第三者に会社を譲渡・譲受する場合は、別枠の「専門家活用枠」が対象となります。第三者承継(M&A)を検討されている方は、専門家活用枠(買い手・売り手支援類型)の詳細はこちらをご覧ください。
2. 補助率・補助上限額 ― いくらもらえるのか
基本の補助内容(第15次公募)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助率 | 1/2以内(小規模事業者等は2/3以内) |
| 補助下限額 | 100万円 |
| 補助上限額(基本) | 800万円 |
| 補助上限額(賃上げ要件達成時) | 1,000万円(800万円超〜1,000万円部分の補助率は1/2) |
| 廃業費の上乗せ(併用申請時) | +300万円以内 |
つまり、賃上げ要件を達成し、廃業費を併用すれば、合計で最大1,300万円の補助を受けられる可能性があります。
補助率2/3となる「小規模事業者等」の定義
| 業種 | 従業員数 |
|---|---|
| 製造業その他 | 20人以下 |
| 商業(卸売業・小売業)・サービス業 | 5人以下 |
| サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
多くの中小企業がこの「小規模事業者等」に該当するため、補助率2/3が適用されるケースは少なくありません。
補助上限を1,000万円に引き上げるための「賃上げ要件」
補助上限額を800万円から1,000万円に引き上げるには、次の賃上げ要件を満たす必要があります。
- 補助事業完了日を含む事業年度(基準年度)と比較して、翌年度の従業員1人当たり給与支給総額を3%以上引き上げること
- 公募申請時までに、すべての従業員または従業員代表者・役員に対して、賃上げ実施を書面で表明すること
注意したいのは、賃上げ要件を満たせなかった場合、上限引き上げ分(最大200万円)の返還を求められる点です。さらに、事業計画期間中の各年度末でも水準維持が必要となります。安易に引き上げ枠を狙うのではなく、計画的に判断する必要があります。
3. どんな経費が補助対象になるのか
事業承継促進枠の補助対象経費は、「事業費」と「廃業費(併用申請時のみ)」に大きく分かれます。
事業費(本体経費)
| 経費区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 設備費 | 国内の店舗・事務所等の工事費、機械装置・工具・備品の調達費(品目1件20万円(税抜)以上)、特定業務用ソフトウェア |
| 産業財産権等関連経費 | 特許権・実用新案・意匠・商標の取得に要する弁理士費用、出願翻訳料など |
| 謝金 | 士業・大学博士・教授等の専門家への謝礼 |
| 旅費 | 販路開拓等のための国内外出張に係る交通費・宿泊費(エコノミークラスまで) |
| 外注費 | 業務の一部を第三者に外注(請負)するための費用 |
| 委託費 | 業務の一部を第三者に委託するための費用(事業費合計の1/2が上限) |
廃業費(廃業・再チャレンジ枠との併用申請時のみ)
- 廃業支援費(登記申請手続きに伴う司法書士への費用)
- 在庫廃棄費、解体費、原状回復費
- リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費
承継後に「一部の事業所は閉鎖して経営資源を集中させたい」というケースでは、廃業費の併用が有効です。
補助対象とならない主な経費(注意点)
- 事業承継に際して被承継者に支払う譲受費用(株式取得費・資産購入費等)
- 不動産購入費、自動車購入費(リース・レンタルは可)
- 汎用性の高い物品(パソコン、タブレット、スマートフォン、カメラ等)
- 消耗品、事務用品、雑誌・新聞・書籍代
- 売上原価・製造原価に相当するもの
- 通信費、光熱水費、振込手数料
特に「設備費」では、品目1件あたり20万円(税抜)以上のものしか対象とならない点、また1件50万円(税抜)以上の支払いには原則として2者以上の相見積もりが必要な点は、申請段階で見落としやすいポイントです。
4. 申請者・事業承継の要件
承継予定者(後継者)の要件
後継者となる方は、次のいずれかに該当する必要があります。
- (法人の場合)対象会社の会社法上の役員として3年以上の経験を有する者
- (法人の場合)対象会社に継続して3年以上雇用され業務に従事した経験を有する者
- (法人の場合)役員・雇用の経験を通算3年以上有する者
- (法人の場合)被承継者の親族(六親等内の血族、配偶者、三親等内の姻族)で、対象会社の代表経験が無い者
- (個人事業主の場合)個人事業に継続して3年以上雇用された経験を有する者
- (個人事業主の場合)被承継者の親族で、過去に承継対象事業の代表経験が無い者
事業承継の要件
- 対象会社は、公募申請時点で3期分の決算・申告が完了していること(個人事業主は開業から5年以上経過)
- 同一法人内の代表者交代による親族・従業員への事業承継であること(複数代表は不可)
- 経営権と所有権(株式・持分等)のいずれも被承継者から承継者へ譲渡されること
- 公募申請期日(2026年7月24日)から5年後の2031年7月23日までに事業承継を完了すること
- 認定経営革新等支援機関より、事業承継の蓋然性が高いと確認された計画書であること
注意したいのは、代表者の交代だけでは要件を満たさず、株式や持分の譲渡(経営権と所有権の双方の移転)が必須である点です。「とりあえず社長を息子に交代するが、株は当面そのまま」という運用は本補助金では認められません。
「実質的な事業承継」と認められないケース
以下のような場合は、要件を満たさないとして補助対象外となります。
- 経営権と所有権の移転を伴わない代表者交代のみ
- グループ内の事業再編
- 物品・不動産等のみを保有する事業の承継
- フランチャイズ契約、または実質的にフランチャイズとみなされる場合
- 従業員等への「のれん分け」
- 休眠会社や事業実態のない会社における代表者交代
- 設立間もない法人における代表者交代
5. 生産性向上要件 ― 補助事業計画の核心
本補助金の特徴的な要件として、補助事業期間を含む5年間の事業計画において、生産性向上要件を達成する計画を立てる必要があります。
- 「付加価値額」または「1人当たりの付加価値額」の伸び率が、年率3%以上
- 付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
この計画は、補助事業終了後の事業化状況報告で進捗が確認されます。単に「機械を買いたい」というだけでは採択は難しく、「この設備投資により、なぜ・どのように付加価値額が年率3%以上向上するのか」を、数値的根拠とともに事業計画書で論証する必要があります。
ここが、事業承継促進枠の申請で多くの経営者がつまずく最大のポイントです。
6. 申請スケジュール(第15次公募)
| 項目 | 期日 |
|---|---|
| 公募要領公開 | 2026年5月22日(金) |
| 申請受付期間 | 2026年6月19日(金) 〜 2026年7月24日(金)17:00 |
| 補助事業期間(予定) | 2026年9月下旬から14か月以内 |
| 事業承継完了期限 | 2031年7月23日(申請期日から5年後) |
申請受付期間の締切日時を1秒でも過ぎると一切受け付けられません。実務上は最低でも1〜2か月程度の準備期間を確保することをおすすめします。
7. 申請の流れ
- GビズIDプライムアカウントの取得(未取得の場合、発行に1〜3週間)
- 認定経営革新等支援機関の選定・確認書取得依頼
- 事業承継計画書・補助事業計画書の策定
- 加点事由を証する書類の準備(任意)
- Jグランツ(電子申請システム)による申請書類の提出
- 審査・採択通知の受領
- 交付申請 → 交付決定通知の受領
- 補助事業の実施(設備調達等)
- 実績報告書の提出 → 確定検査 → 補助金の交付(精算払い)
- 事業化状況報告(交付後5年間)
特に注意したいのが、「GビズIDプライムの取得」と「認定経営革新等支援機関の確認書」です。いずれも申請ぎりぎりに依頼しても間に合わないケースが多く、申請を決めたら真っ先に着手すべき手続きです。
8. 採択率を高める「加点事由」
第15次公募では、以下のいずれかに該当すると審査で加点されます。該当するものは漏れなく証明書類を提出することで、採択の可能性が高まります。
- 「中小企業の会計に関する基本要領」または「中小企業の会計に関する指針」の適用
- 「経営力向上計画」「経営革新計画」「先端設備等導入計画」の認定・承認
- 「地域おこし協力隊」として地方公共団体から委嘱を受けている場合
- 「地域未来牽引企業」「健康経営優良法人」
- 「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用
- 「(連携)事業継続力強化計画」の認定
- 「アトツギ甲子園」の出場者
- 「えるぼし認定」「くるみん認定」等のワーク・ライフ・バランス推進
- 賃上げ加点(基準年度比2%以上の賃上げを表明)
- 「成長加速マッチングサービス」での課題登録
- 事業承継・引継ぎ支援センターまたは中小機構地域本部での事業承継計画書の策定
- 米国の追加関税措置により大きな影響を受ける場合(第15次公募の新設加点)
注意点として、賃上げ加点を申請しながら未達成だった場合、その後18か月間、中小企業庁所管の他補助金(ものづくり補助金、IT導入補助金、持続化補助金など)の申請で大幅に減点されるペナルティがあります。安易な賃上げ表明は避け、実行可能性を慎重に検討する必要があります。
9. 第14次公募との主な変更点
過去の公募からの主な変更点として、押さえておきたいのは次の点です。
- 補助下限額が引き上げられました。第15次公募では、補助対象経費に補助率(2/3または1/2)を乗じた金額が100万円を下回る申請は受け付けられません。小規模な設備投資のみの計画では下限を満たせない可能性があるため、計画段階での確認が重要です。
- 新たな加点事由として、「米国の追加関税措置により大きな影響を受ける場合」が追加されました。輸出入関連の事業者の方は該当可否を確認する価値があります。
10. 申請にあたっての重要な注意点
(1) 補助金申請の有償代行は「行政書士の独占業務」
第15次公募要領には、次のような重要な記載があります。
行政書士(又は行政書士法人)でない者が、申請者に変わって有償で申請の作成をおこなうことは、行政書士法違反に該当する可能性があるほか、交付決定後に行政書士(又は行政書士法人)以外が申請の作成を行ったことが判明した場合、交付決定の取消となる可能性がある。
つまり、補助金の申請書類作成を有償で代行できるのは行政書士(または行政書士法人)に限られるということです。「補助金コンサル」「経営支援」を名乗る業者に申請書類作成を有償で依頼した場合、行政書士法違反となるだけでなく、せっかく採択されても交付決定が取り消されるリスクがあります。
また、申請の作成を行政書士に委任する場合は、申請時に次の書類を提出する必要があります。
- 日本行政書士会連合会発行の行政書士証票の写し
- 委任契約書等(委任範囲が明記されたもの)
(2) 補助金は「後払い(精算払い)」である
本補助金は、事業完了後の精算払いです。交付決定を受けてから、まず自社で設備購入等の費用を全額立替え、後日、実績報告と確定検査を経てから補助金が振り込まれます。手元資金が不足する場合は、つなぎ融資の検討が必要です。
(3) 「交付決定日より前」の発注・契約は対象外
採択されたとしても、その後の交付決定日より前に発注・契約した経費は補助対象になりません。「採択=お金がもらえる」ではなく、「交付決定後にはじめて発注できる」という流れを正しく理解しておく必要があります。
(4) 事業承継未完了時の補助金返還リスク
採択後、事業化状況報告において2031年7月23日までに事業承継が完了していないことが判明した場合、交付された補助金の返還を求められます(事業者の責めに帰さない事由がある場合を除く)。「とりあえず採択を取りに行く」のではなく、実際に承継を完了できる現実的な計画であることが不可欠です。
11. 事業承継は「専門家との伴走」が成否を分ける
ここまでお読みいただいて、「思っていたよりずっと複雑だ……」と感じられた方も多いのではないでしょうか。
事業承継促進枠の申請は、単に書類を集めて提出すれば終わるものではありません。次のような実務上のハードルがあります。
- 認定経営革新等支援機関との折衝・確認書の取得
- 「付加価値額年率3%向上」を論証する事業計画書の策定
- 承継予定者の親族関係・役員履歴・雇用履歴の証明書類の準備
- 承継時の株式譲渡・持分譲渡スキームの設計(税務・法務面)
- 承継後の許認可の再取得・名義変更(建設業・運送業・宅建業・産廃業・介護事業など)
- 定款変更・登記事項の変更
- 賃上げ要件・加点事由を漏れなく押さえる戦略
- 補助事業期間中の発注・支払いのタイミング管理
- 交付後5年間の事業化状況報告の継続義務
これらすべてを経営者の方ご自身で把握し、本業と並行して進めるのは、現実的にはかなりの負担です。特に、許認可ビジネスを営む会社の承継では、許認可の引き継ぎ可否が事業継続そのものを左右します。
そして前述のとおり、補助金申請書類の作成を有償で代行できるのは、行政書士の独占業務です。
事業承継に伴う許認可の承継、定款変更、契約書のチェック、補助金申請書類の作成――これらを一気通貫で相談できるパートナーとして、事業承継の実務に強い行政書士に早めにご相談されることをおすすめします。
「自分の会社のケースは補助対象になるのか」「後継者をどう選定すべきか」「株式の譲渡はどう進めればよいか」「許認可の引き継ぎは大丈夫か」――こうした初期段階の疑問こそ、専門家との対話で整理することで、その後の補助金活用や事業承継の確度が大きく変わります。
まとめ
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 5年以内に親族内承継・従業員承継を予定する中小企業者・個人事業主 |
| 補助率 | 1/2(小規模事業者等は2/3) |
| 補助上限額 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円)+廃業費併用で最大1,300万円 |
| 補助下限額 | 100万円 |
| 申請受付期間 | 2026年6月19日 〜 7月24日17:00 |
| 申請方法 | Jグランツ(電子申請)からのみ |
| 必須要件 | GビズIDプライム、認定経営革新等支援機関の確認書、5年間の事業計画 |
| 申請代行 | 有償で行えるのは行政書士のみ |
第15次公募の申請受付は2026年7月24日17:00まで。締切間際の駆け込みでは、認定支援機関の確認書取得が間に合わなかったり、書類の不備で申請を断念せざるを得ないケースが少なくありません。
事業承継は、経営者の方にとって一生に何度もある出来事ではありません。だからこそ、最初の一歩を踏み出す前に、信頼できる専門家にご相談ください。
当事務所では、行政書士が事業承継・M&A補助金の申請をワンストップでサポートしております。初回相談は無料です。お気軽にお問い合わせください。
※M&A(第三者承継)を検討されている方は、専門家活用枠(買い手・売り手支援類型)の詳細はこちらもあわせてご覧ください。
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