廃業・再チャレンジ枠とは?事業承継・M&Aに伴う廃業費用を最大300万円補助【行政書士が解説】
「後継者が見つからず、M&Aも試みたが買い手が現れなかった」
「会社をたたみたいが、解体費用や原状回復費用が重くのしかかる」
「廃業して、もう一度新しい事業に挑戦したい」
このような悩みを抱える経営者の方に、ぜひ知っていただきたい制度があります。それが、国(中小企業庁)が実施する 「事業承継・M&A補助金 廃業・再チャレンジ枠」 です。
この制度は、単に「廃業を支援する」だけのものではありません。廃業をひとつの区切りとし、経営者の次なるチャレンジを後押しする という前向きな性格を持つ補助金です。本記事では、行政書士の視点から、2026年5月に公募が開始された15次公募の制度概要・申請のポイントをわかりやすく解説します。
1. 廃業・再チャレンジ枠の制度概要
どんな人が対象か
廃業・再チャレンジ枠は、大きく分けて次のような中小企業者・個人事業主を対象としています。
- M&Aで事業を譲り渡そうとしたが、買い手が見つからず成約に至らなかった経営者
- 事業承継・M&Aを契機として、既存事業の一部または全部を廃業する必要がある経営者
特に、廃業・再チャレンジ枠を単独で申請する場合(再チャレンジ申請)は、2020年以降にM&A(事業の譲り渡し)に着手したものの成約に至らなかったこと が要件のひとつとなります。
「着手した」と認められるのは、原則として次のいずれかに該当する場合です。
- 事業承継・引継ぎ支援センターへの相談依頼
- M&A仲介業者や地域金融機関等(M&A支援機関)との包括契約の締結
- M&Aマッチングサイトへの登録
なお、申請者自身でM&Aに着手した場合は対象外 となる点、また公募申請期日時点で着手から3か月以上経過していることが必要な点に注意が必要です。
何の費用が補助されるか
廃業に伴って発生する、以下のような費用が補助対象となります。
- 廃業に関する登記申請手続きのため司法書士に支払う費用(廃業支援費)
- 既存事業の在庫処分にかかる費用(在庫廃棄費)
- 建物・設備等の解体費用(解体費)
- 借りていた物件・設備等の原状回復費用(原状回復費)
- リースの解約に伴う解約金・違約金(リース解約費)
- 土壌汚染調査費
- 設備の移転・移設費(他の枠との併用申請時のみ計上可)
「廃業したいけれど、解体費や原状回復費が想像以上にかかる」というのは、多くの経営者が直面する現実的な悩みです。本制度は、こうした 「店じまい・会社じまい」に必要な実費 を国が一部補助してくれる、極めて実務的な制度といえます。
2. 補助率・補助上限額
公募要領に記載されている15次公募時点の補助率・補助上限額は、次のとおりです。
- 補助率:補助対象経費の3分の2以内(再チャレンジ申請[単独申請]の場合)
- 補助下限額:50万円
- 補助上限額:300万円以内
なお、補助下限額を下回る申請(補助対象経費で75万円未満の申請)は受け付けられない点に注意が必要です。
また、廃業支援費(司法書士費用等)については、補助上限額が50万円 と定められています。
※補助率・補助上限額・対象経費の取り扱いは、公募回次ごとに変更される可能性があります。実際に申請される際は、必ず事業承継・M&A補助金 公式サイト で最新の公募要領をご確認ください。
3. 申請スケジュール(15次公募)
15次公募のスケジュールは以下のとおりです。
| 項目 | 期日 |
|---|---|
| 公募要領公開 | 2026年5月22日(金) |
| 申請受付期間 | 2026年6月19日(金) 〜 2026年7月24日(金)17:00 |
| 補助事業期間(予定) | 2026年9月下旬から約14か月程度 |
申請受付期間の 締切日時を1秒でも過ぎると一切受け付けられない ため、余裕を持った準備が不可欠です。
4. 申請の流れ
申請から補助金受領までは、おおむね次のステップで進みます。
- GビズIDプライムアカウントの取得(未取得の場合は1〜3週間程度かかります)
- 認定経営革新等支援機関(認定支援機関)からの確認書の取得
- 再チャレンジ計画書・必要書類の準備
- 電子申請システム「Jグランツ」を通じた申請書類の提出
- 審査・採択通知の受理
- 交付申請 → 交付決定通知の受理
- 補助事業の実施(廃業手続き等)
- 実績報告書の提出
- 確定検査 → 補助金の交付(精算払い)
- 事業化状況報告(交付後1年間)
特に重要なのが、GビズIDプライムアカウントの取得には時間がかかる という点です。混雑時は3週間程度を要することもあるため、申請を検討される方はまず最初に取得手続きを進めることをおすすめします。
5. 他の枠との併用申請という活用パターン
廃業・再チャレンジ枠は、事業承継・M&A補助金の他の枠と併用して申請することが可能 です。これにより、「事業の引継ぎや統合に必要な費用」と「不要となる事業の整理にかかる費用」の両方を一体的に補助対象にできるという、極めて実用的な活用が可能になります。
具体的には、次のような併用パターンが認められています。
- 事業承継促進枠との併用
事業承継により譲り受けた事業の一部、または既存事業の一部を廃業する場合 - 専門家活用枠(買い手支援類型)との併用
M&Aで事業を譲り受けるにあたり、既存事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合 - 専門家活用枠(売り手支援類型・小規模売り手支援類型)との併用
M&A後、手元に残った事業を廃業する場合 - PMI推進枠(PMI専門家活用類型、事業統合投資類型)との併用
M&A後の経営統合(PMI)において、既存事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合
たとえば、「親族や従業員に事業を承継するけれども、一部の不採算事業は整理したい」というケースでは、事業承継促進枠と廃業・再チャレンジ枠の併用が有効な選択肢となります。
親族内承継・従業員承継(MBO等)を検討されている方は、こちらの記事もあわせてご覧ください 👉 親族内承継・従業員承継の場合の補助制度について
6. 申請にあたっての主な注意点
(1) 経費の発生タイミングは「交付決定日以降」が原則
補助対象となる経費は、原則として 「交付決定日以降に契約・発注し、補助事業期間内に支払いまで完了したもの」 に限られます。
つまり、「先に解体工事を発注してしまった」「先に在庫処分を済ませてしまった」というケースでは、その費用は補助対象外となる可能性が高くなります。これは多くの補助金で共通する原則ですが、廃業はタイミングの判断が難しい局面でもあるため、着手前に必ず制度を確認すること が極めて重要です。
(2) 共同申請が必要(再チャレンジ申請の場合)
法人として再チャレンジ申請を行う場合、廃業する対象会社と、その支配株主(議決権の過半数を有する株主)または株主代表との 共同申請 が必要です。個人事業主の場合は、当該個人事業主による単独申請となります。
(3) 相見積の取得が原則必須
1件あたり50万円(税抜)以上の支出を要する経費については、原則として2者以上から相見積を取得すること が必須です。相見積を取得できない場合は、補助対象経費として認められない可能性があります。
(4) 賃上げ等の加点要件
採択審査では、以下のような加点事由が設けられています。
- 再チャレンジする主体の年齢が若いこと
- 再チャレンジの内容が「起業(個人事業主含む)」であること
- 一定の賃上げを実施し、従業員に表明していること
(5) 認定支援機関の確認書が必須
申請には、廃業後の再チャレンジに関する計画について、認定経営革新等支援機関の確認書 を取得することが求められます。日頃から付き合いのある税理士・金融機関等が認定支援機関であるかどうかを事前に確認しておきましょう。
7. 申請代行は「行政書士」のみが可能です
ここで、非常に重要な点をお伝えします。
事業承継・M&A補助金の公募要領では、申請内容の作成について、次のように明記されています。
行政書士(又は行政書士法人)でない者が、申請者に変わって有償で申請の作成をおこなうことは、行政書士法違反に該当する可能性があるほか、交付決定後に行政書士(又は行政書士法人)以外が申請の作成を行ったことが判明した場合、交付決定の取消となる可能性がある。
つまり、有償で補助金申請書類の作成を代行できるのは、原則として行政書士(または行政書士法人)に限られている ということです。
「コンサルタント」や「申請サポート業者」を名乗る事業者に有償で申請書類の作成を依頼することは、行政書士法違反にあたる可能性があり、最悪の場合 採択・交付決定が取り消されるリスク があります。せっかくの補助金が水の泡になりかねないため、依頼先は必ず行政書士資格を有する専門家かどうかを確認してください。
行政書士に依頼するメリット
- 法令に基づき、適法に申請書類の作成代行ができる
- 公募要領・別紙資料の読み込み、必要書類の整理を専門家に任せられる
- 認定支援機関や司法書士、税理士との連携を含めたトータルな申請サポートが可能
- 廃業に伴う関連手続き(各種許認可の廃止届、契約解除手続きの整理等)もあわせて相談できる
- 経営者は本業(廃業準備・再チャレンジ準備)に集中できる
廃業というのは、経営者にとって精神的にも実務的にも大きな負担がかかる局面です。慣れない補助金申請に時間と労力を費やすよりも、専門家を活用し、「次の一歩」に集中できる環境を整えること をおすすめします。
8. 廃業は「終わり」ではなく「次へのスタート」
「廃業」という言葉には、どうしてもネガティブな響きがあります。しかし、本制度の正式名称が「廃業・再チャレンジ枠」となっているとおり、国はこの取り組みを 「再チャレンジに向けた前向きな整理」 と位置づけています。
実際、再チャレンジの形態には以下のような選択肢があります。
- 新たに法人を設立して別の事業を始める
- 個人事業主として新しい分野に挑戦する
- これまでの知識・経験を活かして他社に就職し、社会貢献する
長年積み上げてきた経験は、決して無駄にはなりません。本補助金を活用し、次のステージへスムーズに移行するための「整理」 をしっかり行うことが、これからの経営者人生にとって大きな意味を持つはずです。
9. お問い合わせ・ご相談はお気軽に
当事務所では、事業承継・M&A補助金「廃業・再チャレンジ枠」の申請サポートを行っております。
- 「自社が要件を満たすかどうか分からない」
- 「他の枠と併用できるか相談したい」
- 「廃業のスケジュールと補助金申請のタイミングを整理したい」
- 「認定支援機関や司法書士との連携も含めて任せたい」
このようなご相談は、まずはお気軽にお問い合わせください。初回のご相談にて、申請可能性・スケジュール・概算費用などを丁寧にご説明させていただきます。
廃業は決して後ろ向きな選択ではありません。次の挑戦に向けて、最良のかたちで区切りをつけるためのお手伝いをさせていただきます。
📞 お電話でのお問い合わせ:090-1695-6956
✉ メールでのお問い合わせ:お問い合わせフォームへ
【免責事項】
本記事は、2026年5月22日に公開された事業承継・M&A補助金(15次公募)廃業・再チャレンジ枠の公募要領に基づき、執筆時点の情報を整理したものです。補助率・補助上限額・対象経費・申請要件等は、今後の公募回次において変更される可能性があります。実際に申請を検討される際は、必ず事業承継・M&A補助金 公式サイトにて最新の公募要領をご確認のうえ、ご判断ください。
