廃業・再チャレンジ枠とは?事業承継・M&Aに伴う廃業費用を最大300万円補助【行政書士が解説】

「後継者が見つからず、M&Aも試みたが買い手が現れなかった」
「会社をたたみたいが、解体費用や原状回復費用が重くのしかかる」
「廃業して、もう一度新しい事業に挑戦したい」

このような悩みを抱える経営者の方に知っていただきたいのが、国(中小企業庁)が実施する「事業承継・M&A補助金 廃業・再チャレンジ枠」です。解体費・原状回復費・在庫処分費などの「会社じまい」の実費を、補助率2/3・最大300万円で補助する制度です。

ただし、この補助金には「誰でも申請できるわけではない」という厳格な入口要件があります。まずは30秒で、ご自身が対象になるかをご確認ください。

【30秒セルフチェック】あなたは今回の公募で申請できますか?

以下の5問すべてに「はい」と答えられる方が、今回の公募(申請受付:2026年10月2日〜11月6日)で申請できる方です。

  • Q1. 2020年以降、M&A(事業の譲り渡し)に「着手」しましたか?
    ※着手と認められるのは、①事業承継・引継ぎ支援センターへの相談依頼、②M&A支援機関との包括契約、③M&Aマッチングサイトへの登録、のいずれか。ご自身で買い手を探しただけでは該当しません。
  • Q2. その着手から、2026年11月6日時点で3か月以上が経過していますか?
    ※つまり、2026年8月6日までに着手している必要があります。
  • Q3. 廃業にかかる費用(解体・原状回復・在庫処分・廃業登記の司法書士費用など)は、税抜75万円以上かかる見込みですか?
  • Q4. 廃業後に、新会社の設立・個人事業の開始・就職などの「再チャレンジ」を予定していますか?
  • Q5. 認定経営革新等支援機関(取引金融機関・税理士など)から確認書の発行を受けられる見込みがありますか?

▶ すべて「はい」の方
今回の公募で申請可能です。このまま本文をお読みください。締切まで日数が限られていますので、準備は早めに着手してください。

▶ Q1またはQ2が「いいえ」の方(M&Aに未着手、または着手から3か月未満)
今回の公募では申請できません。ただし、いま着手すれば次回以降の公募で要件を満たせます。詳しくは「今回に間に合わない方が、いま取るべき行動」をご覧ください。

▶ Q4が「いいえ」の方(再チャレンジの予定がない)
本制度の対象外です。本補助金は「廃業後に再び挑戦する方」を支援する制度であり、廃業後の生活資金を給付する制度ではありません。廃業後の資金確保をお考えの方は、「廃業後の生活資金をお探しの方へ」をご覧ください。


1. 廃業・再チャレンジ枠の制度概要

どんな人が対象か

廃業・再チャレンジ枠には、「再チャレンジ申請(単独申請)」と「他の枠との併用申請」の2つのパターンがあります。

  • 再チャレンジ申請(単独申請):M&Aで事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主、または個人事業主が、新たなチャレンジのために既存事業を廃業する場合
  • 併用申請:事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠のいずれかと併せて申請し、それに伴う廃業費用を補助する場合

単独申請の入口となるのが、「2020年以降、M&A(事業の譲り渡し)に着手したものの、成約に至らなかったこと」という要件です。「着手した」と認められるのは、原則として次のいずれかに該当する場合に限られます。

  • 事業承継・引継ぎ支援センターへの相談依頼
  • M&A仲介業者や地域金融機関等(M&A支援機関)との包括契約の締結
  • M&Aマッチングサイトへの登録

公募要領では、申請者自身でM&Aに着手した場合は対象外と明記されています。着手の支援は、原則としてM&A支援機関登録制度に登録された専門家等によるものである必要があります。また、公募申請期日の時点で着手から3か月以上が経過していることが求められます。

もう一点、見落とされやすい要件があります。単独申請で対象となるのは、会社自体を廃業する場合に限られます。事業の一部だけを廃業(事業撤退)するケースは、他の枠との併用申請でのみ対象となります。

何の費用が補助されるか

  • 廃業支援費:廃業に関する登記申請手続きのため司法書士に支払う費用/解散・清算・残余財産確定の各事業年度における会計処理・税務申告に係る専門家費用(法人の場合)
  • 在庫廃棄費:既存事業の商品在庫を専門業者に依頼して処分する費用
  • 解体費:既存事業の廃止に伴う建物・設備等の解体費
  • 原状回復費:借りていた土地・建物・設備等を返却する際の原状回復費用
  • リースの解約費:リース解約に伴う解約金・違約金
  • 土壌汚染調査費:使用地歴調査、有害物質の種類特定、濃度測定等の費用
  • 移転・移設費:効率化のための設備移転費(併用申請時のみ計上可)

一方、次の費用は補助対象外です。

  • 登記事項変更等に係る登録免許税、定款認証料、収入印紙代、印鑑証明等の各種証明類の取得費用
  • 本補助金に関する書類作成代行費用(申請代行報酬そのものは補助対象になりません)
  • 商品在庫を売って対価を得る場合の処分費、海外在庫、消耗品の処分費
  • ファイナンスリース取引の解約に伴う解約金・違約金、リース資産の売買に係る費用
  • 土壌汚染「対策工事」の費用(調査費は対象ですが、工事費は対象外です)
  • 原状回復の必要がない賃貸借物件・設備、自己所有物の修繕費

2. 補助率・補助上限額

支援類型補助率補助下限額補助上限額
再チャレンジ申請(単独申請)補助対象経費の2/3以内50万円300万円
併用申請併用先の枠の補助率に従う50万円300万円
出典:事業承継・M&A補助金(16次公募)廃業・再チャレンジ枠 公募要領 Ver.1.0

注意点は2つです。

  • 交付申請時の補助額が補助下限額を下回る申請(補助対象経費で75万円未満)は受け付けられません。
  • 廃業支援費(司法書士費用・会計税務の専門家費用)は、単独で上限50万円が設定されています。

なお、併用申請を行う場合の補助率・必要書類は併用先の枠の公募要領に従います。申請前に必ず該当する枠の公募要領をご確認ください。

買い手が見つからないまま、11月6日の締切が近づいている方へ

M&Aへの着手から3か月以上が経過している方は、今回の公募で申請できます。「自社の廃業費用がいくら補助されるのか」「必要書類が揃うか」を、行政書士が初回無料でお調べします。着手金は0円、費用は補助金の交付が決定した場合のみです。


3. 申請スケジュール

項目期日
公募要領の開示2026年9月4日(金)
申請受付期間2026年10月2日(金)〜2026年11月6日(金)17:00
補助事業期間(予定)2027年1月下旬から14か月以内

申請受付期間の締切日時を過ぎた申請は一切受け付けられません。また、申請に必要なGビズIDプライムアカウントの発行には1〜2週間、混雑時は3週間程度を要します。余裕を持った準備が不可欠です。


4. 今回に間に合わない方が、いま取るべき行動

セルフチェックのQ1・Q2で「いいえ」だった方、つまりまだM&Aに着手していない方や、着手から3か月に満たない方は、今回の公募では申請できません。しかし、これは「対象外」ではなく「まだ順番が来ていない」だけです。

要件は「2020年以降に着手し、申請期日時点で3か月以上経過していること」ですから、いま着手しておけば、次回以降の公募では要件を満たします。逆に、着手しないまま時間が過ぎると、次回公募でも同じ理由で申請できません。

当事務所はM&A支援機関登録制度の登録機関です。譲り渡し側専任のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)として包括契約を締結すれば、その時点が公募要領上の「着手」にあたります。そのうえで、

  • 買い手が見つかった場合 → M&Aによる事業承継が実現します(専門家活用枠の対象)
  • 買い手が見つからなかった場合 → 3か月経過後、廃業・再チャレンジ枠の単独申請が可能になります

という、どちらに転んでも次の手が残る状態を作れます。廃業を検討されている方こそ、まず譲渡の可能性を探ることをおすすめします。会社を残せるのであれば、それに越したことはありません。


廃業後の生活資金をお探しの方へ

本補助金は、廃業にかかる実費(解体費・原状回復費等)を事後精算で補助する制度であり、廃業後の生活費を給付する制度ではありません。補助金は事業完了後の精算払いであり、手元資金として先に受け取れるものでもありません。

廃業後の生活資金の確保という観点では、公募要領でも案内されている小規模企業共済(個人事業をやめたとき、会社等の役員を退職したとき等の生活資金をあらかじめ積み立てておく、いわば「経営者の退職金制度」)が該当します。詳細は中小機構の公式サイトをご確認ください。当事務所では共済の加入手続きは取り扱っておりません。


5. 申請の流れ

  1. GビズIDプライムアカウントの取得(未取得の場合。発行まで1〜2週間、混雑時は3週間程度)
  2. 認定経営革新等支援機関の検討・確認書の取得
  3. 再チャレンジ計画書・必要書類の準備(M&A着手を示す証憑、履歴事項全部証明書、決算書3期分、株主名簿等)
  4. Jグランツを通じた申請書類の提出
  5. 審査・採択通知の受理
  6. 交付申請 → 交付決定通知の受理
  7. 補助事業の実施(廃業手続き等。発注は交付決定後)
  8. 状況報告・実績報告書の提出
  9. 確定検査 → 補助金の交付(精算払い)
  10. 事業化状況報告(交付後1年間)

実績報告の段階では、法人の場合は廃業が確認できる閉鎖事項全部証明書、個人事業主の場合は個人事業の廃業等届出書の提出が必要です。つまり、補助金を受け取るには実際に廃業を完了させる必要があります。


6. 他の枠との併用申請という活用パターン

廃業・再チャレンジ枠は、事業承継・M&A補助金の他の枠と併用して申請することが可能です。「事業の引継ぎや統合に必要な費用」と「不要となる事業の整理にかかる費用」の両方を一体的に補助対象にできます。

  • 事業承継促進枠との併用:事業承継により譲り受けた事業の一部、または既存事業の一部を廃業する場合
  • 専門家活用枠(買い手支援類型)との併用:M&Aで事業を譲り受けるにあたり、既存事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合
  • 専門家活用枠(売り手支援類型・小規模売り手支援類型)との併用:M&A後、手元に残った事業を廃業する場合
  • PMI推進枠(PMI専門家活用類型、事業統合投資類型)との併用:M&A後の経営統合において、既存事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合

併用申請を行う場合は、併用する枠の申請フォームから申請します。廃業・再チャレンジ枠として別途申請する必要はありません。

親族内承継・従業員承継(MBO等)を検討されている方はこちら
👉 親族内承継・従業員承継の場合の補助制度について

M&Aで会社を譲り受ける側・譲り渡す側の方はこちら
👉 専門家活用枠(買い手・売り手支援類型)の詳しい解説

専門家報酬がいくらかかり、補助金でいくら戻るかはこちら
👉 事業承継・M&A補助金の費用相場


7. 申請にあたっての主な注意点

(1) 発注は「交付決定日以降」が原則

補助対象となるのは、交付決定日以降に発注し、補助事業期間内に納品・検収・支払まで完了した経費です。見積の取得は交付決定前でも構いませんが、発注が交付決定前だとその経費は対象外になります。「先に解体工事を発注してしまった」というケースが最も多い失敗です。

(2) 支払方法が限定されている

補助対象となる支払方法は、補助事業者名義の口座からの銀行振込またはクレジットカード1回払いのみです。次の方法は補助対象外となります。

  • 口座から現金を引き出しての振込(手形・小切手を含む)
  • 相手方への現金での支払い
  • キャッシュレスサービスでの支払い(PayPay、Suica等)、仮想通貨での支払い

解体業者への現金払いは中小企業の廃業局面では起こりがちですが、これをすると補助対象外になります。

(3) 共同申請が必要(再チャレンジ申請の場合)

法人として再チャレンジ申請を行う場合、廃業する対象会社と、その支配株主(議決権の過半数を有する株主)または株主代表との共同申請が必要です。個人事業主の場合は、当該個人事業主による申請となります。

また、補助対象経費は対象会社・支配株主・株主代表または個人事業主が契約主体となり、かつ支払を実施したものに限られます。他の株主が負担した分は補助対象外です。

(4) 相見積の取得が原則必須

1件あたり50万円(税抜)以上の支出を要する経費については、原則として2者以上から相見積を取得し、最低価格を提示した者を選定することが必須です。50万円未満であっても、1社からの見積は必須です。

(5) 審査の着眼点

書面審査では、次の3点が見られます。再チャレンジ計画書の記載は、この3点に正面から答える形で構成する必要があります。

  1. 再チャレンジを実現するために廃業が必要な理由が明確であること
  2. 廃業に向けた準備(従業員の再就職方針、既存取引先への支払方針、取引先の引継ぎ)が明確であること
  3. 再チャレンジの実現性(これまでの技術・ノウハウ・経験を踏まえた実現可能な事業であること)

(6) 加点事由

  • 再チャレンジする主体の年齢が若いこと
  • 再チャレンジの内容が「起業(個人事業主含む)」であること
  • 従業員1人当たりの給与支給総額を2%以上引き上げる計画を、公募申請時までに従業員へ表明していること

賃上げ加点を申請したにもかかわらず未達となった場合、その後18か月間、中小企業庁が所管する補助金の審査で大幅に減点されます。安易な表明は避けてください。

(7) 認定支援機関の確認書が必須

申請には、廃業後の再チャレンジに関する計画について、認定経営革新等支援機関の確認書を取得することが求められます。取引金融機関や顧問税理士が認定支援機関であるかを、早めにご確認ください。

なお、当事務所は認定経営革新等支援機関ではありません。確認書は、お取引のある認定支援機関から取得していただく必要があります。当事務所は、その確認を受けるための再チャレンジ計画書の作成と、申請書類一式の作成を担当します。


8. 有償での申請書類の作成代行は「行政書士」のみが可能です

事業承継・M&A補助金の公募要領には、次のように明記されています。

行政書士(又は行政書士法人)でない者が、申請者に代わって有償で申請の作成をおこなうことは、行政書士法違反に該当する可能性があるほか、交付決定後に行政書士(又は行政書士法人)以外が申請の作成を行ったことが判明した場合、交付決定の取消となる可能性がある。

さらに、申請の作成を行政書士に委任する場合には、日本行政書士会連合会が発行する行政書士証票の写しと、委任範囲が明記された委任契約書等の写しの提出が求められます。

「コンサルタント」「申請サポート業者」を名乗る事業者に有償で申請書類の作成を依頼することは、行政書士法違反にあたる可能性があり、採択・交付決定が取り消されるリスクがあります。依頼先が行政書士資格を有しているか、必ずご確認ください。

当事務所の廃業・再チャレンジ枠 申請代行料金

着手金は0円。費用は、補助金の交付が決定した場合に、その補助金額の10%(税別)のみです。採択されなければ費用は発生しません。なお、この申請代行報酬自体は公募要領上、補助対象経費には含まれません。


9. 廃業は「終わり」ではなく「次へのスタート」

制度の正式名称が「廃業・再チャレンジ枠」となっているとおり、国はこの取り組みを「再チャレンジに向けた前向きな整理」と位置づけています。公募要領では、再チャレンジの例として以下が挙げられています。

  • 新たに法人を設立して事業活動を実施する
  • 個人事業主として新たな事業活動を実施する
  • 自身の知識や経験を活かせる企業への就職や、社会への貢献等を実施する

長年積み上げてきた経験は、決して無駄にはなりません。本補助金を活用し、次のステージへ移行するための「整理」をしっかり行うことが、これからの経営者人生にとって大きな意味を持つはずです。


10. お問い合わせ

当事務所では、次の2つの入口でご相談を承っています。

  • M&A着手から3か月以上経過している方 → 廃業・再チャレンジ枠の申請サポート(着手金0円・成功報酬制)
  • まだM&Aに着手していない方 → M&A支援(FA型・譲り渡し側専任)。まず譲渡の可能性を探り、不成立なら次回公募で廃業枠へ

どちらに該当するか分からない場合も、そのままお問い合わせください。初回のご相談で、申請可能性・スケジュール・概算費用をご説明します。

📞 お電話:044-440-7109
✉ メール:お問い合わせフォームへ


【免責事項】

本記事は、2026年9月4日に開示された事業承継・M&A補助金(16次公募)廃業・再チャレンジ枠の公募要領(Ver.1.0)および別紙「補助対象経費」に基づき、執筆時点の情報を整理したものです。補助率・補助上限額・対象経費・申請要件等は、今後の公募回次において変更される可能性があります。実際に申請を検討される際は、必ず事業承継・M&A補助金 公式サイトにて最新の公募要領をご確認ください。