事業承継・M&A補助金の費用相場|報酬と実質負担を解説

事業承継やM&Aを考え始めて、仲介会社やFAに相談したとき。最初に提示されるのは「成功報酬は譲渡価額の◯%」という一文だけで、結局いくら払うことになるのかが最後まで見えない——このまま進めていいのか判断できず、手が止まっている方は少なくありません。

「事業承継・M&A補助金 費用」「M&A 報酬 相場」と検索しても、はっきりした金額が出てこないのには理由があります。この記事では、公募要領(16次公募・2026年9月開示)という一次資料に基づいて、専門家報酬の決まり方と、補助金を使ったあとの実質負担額を具体的な金額で示します。

「費用」には性質の違う2種類がある

相場が見えにくい最大の原因は、まったく性質の異なる2つの費用が混同されている点にあります。まずここを切り分けます。

区分何にかかる費用か支払先補助金の対象
①M&A支援費用相手探し・交渉・契約までの伴走FA・M&A仲介業者対象になる
②補助金の申請支援費用補助金の申請書類の作成・提出行政書士対象にならない

金額として大きいのは圧倒的に①です。そして補助金が補助してくれるのも①。②については、公募要領の補助対象外経費に「申請の作成を行政書士(又は行政書士法人)に委任した際に要する費用」と明記されています。この点は後段で改めて触れます。

①M&A支援費用の相場は「レーマン方式」で決まる

M&Aの成功報酬は、譲渡価額に一定の料率を段階的に掛けて算出します。これをレーマン方式と呼びます。業界慣行として語られることが多いのですが、実は事業承継・M&A補助金の公募要領に、参照用の料率表が掲載されています(相見積の取得が不要となる条件の判定に使われるためです)。

譲渡額または移動総資産乗じる割合
5億円以下の部分5%
5億円超10億円以下の部分4%
10億円超50億円以下の部分3%
50億円超100億円以下の部分2%
100億円超の部分1%

ここで注意が必要なのが基準の取り方です。表にある「移動総資産」とは、譲渡額に負債額を加えた額を指します。同じ会社でも、譲渡額基準か移動総資産基準かで報酬が数倍変わることがあります。見積書を受け取ったら、まずどちらを基準にしているかを確認してください。

成功報酬だけを見ても総額はわからない

FA・仲介の報酬は、一般に次の要素で構成されます。公募要領でも、それぞれが補助対象経費として個別に列挙されています。

  • 着手金——契約時に発生。成約しなくても返金されないのが通例
  • リテーナー費用(月額報酬)——支援期間中、毎月発生
  • 基本合意時報酬(中間金)——基本合意の締結時に発生。成功報酬の10〜20%程度を先払いする設計が多い
  • 成功報酬——最終契約とクロージングに伴い発生
  • 最低手数料——レーマン方式で計算した額が下回る場合に適用される下限額

特に見落とされやすいのが最低手数料です。譲渡価額が小さい案件では、料率計算よりこちらが優先されます。譲渡価額1,000万円の案件でも最低手数料が500万円なら、支払うのは500万円です。小規模なM&Aほど、報酬が譲渡価額を圧迫する構造になっている点は理解しておいてください。

補助金でいくら戻るか(16次公募・専門家活用枠)

上記の①M&A支援費用が、補助の対象です。16次公募の条件は以下のとおりです。

項目買い手支援類型(Ⅰ型)売り手支援類型(Ⅱ型)
補助率補助対象経費の2/3以内補助対象経費の1/2または2/3以内
補助下限額50万円
補助上限額600万円
DD実施による上乗せ+200万円
廃業費の併用申請+300万円
未成約だった場合上限300万円(原則DD費用のみ)

補助下限額の50万円は、補助対象経費ではなく補助額そのものの下限です。補助率1/2なら、対象経費が100万円以上ないと申請できません。

売り手の補助率が2/3になる条件

売り手支援類型は原則1/2ですが、次のいずれかに該当すれば2/3に上がります。補助額が1.33倍になるため、必ず確認すべき分岐点です。

  1. 物価高等の影響により、営業利益率が低下している
  2. 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字である

①は「直近事業年度と2期前の通年比較」または「直近事業年度と進行中の事業年度で、それぞれ任意の連続3か月の平均を比較」のいずれかで判定します。所定の計算書と決算書の提出が必要です。

実質負担額のシミュレーション

当事務所の報酬体系(着手金10万円・月額報酬5万円・成功報酬は譲渡価額の5%・最低手数料100万円/いずれも税別・中間金なし)を前提に、売り手支援類型で試算します。

ケースA:譲渡価額2,000万円・支援期間6か月

着手金10万円
月額報酬(5万円×6か月)30万円
成功報酬(2,000万円×5%)100万円
補助対象経費 合計140万円
補助率1/2の場合の補助額70万円 → 実質負担70万円
補助率2/3の場合の補助額約93万円 → 実質負担約47万円

ケースB:譲渡価額5,000万円・支援期間6か月

着手金10万円
月額報酬(5万円×6か月)30万円
成功報酬(5,000万円×5%)250万円
補助対象経費 合計290万円
補助率1/2の場合の補助額145万円 → 実質負担145万円
補助率2/3の場合の補助額約193万円 → 実質負担約97万円

いずれも補助上限額600万円には届かず、補助下限額50万円はクリアしています。なお補助対象経費からは消費税額を除いて計算します。デュー・ディリジェンス費用は通常買い手側の負担のため、上記には含めていません。

②補助金の申請支援費用は、補助されない

ここは誤解が多いところです。公募要領の補助対象外経費に、次の記載があります。

  • 申請の作成を行政書士(又は行政書士法人)に委任した際に要する費用
  • 本補助金に関する書類作成代行費用

つまり、補助金の申請支援料は自己負担です。この費用まで補助されると説明する支援者がいれば、公募要領を読んでいないことになります。

依頼先は行政書士に限定されている

もうひとつ、料金以前に確認すべき点があります。公募要領には次のとおり明記されています。

行政書士(又は行政書士法人)でない者が、申請者に代わって有償で申請の作成をおこなうことは、行政書士法違反に該当する可能性があるほか、交付決定後に行政書士(又は行政書士法人)以外が申請の作成を行ったことが判明した場合、交付決定の取消となる可能性がある。

さらに、申請の作成を委任する場合は、日本行政書士会連合会が発行する行政書士証票の写し委任範囲が明記された委任契約書等の写しの提出が必須とされています。

リスクを負うのは支援者ではなく申請者側です。交付決定が取り消されれば、受け取った補助金の返還を求められます。依頼先が行政書士かどうかは、料金を比べる前に確認してください。

費用面で失敗しやすい4つの落とし穴

1. 交付決定前に契約すると、全額が対象外になる

最も損失が大きい失敗です。補助対象経費は、交付決定日以降かつ補助事業期間内に契約・発注し、同期間内に支払いを完了したものに限られます。「先にFAと契約して動き出し、あとから補助金を申請する」という順番では、支払った報酬は1円も補助されません。専門家との委託契約は、交付決定通知書を受け取ってから締結してください。

2. 相見積の取得漏れ

1件50万円以上(税抜)の支払いは原則2者以上からの相見積が必須で、最低価格を提示した者を選定する必要があります。さらに外注費・委託費・システム利用料・保険料は、50万円未満でも相見積が必須です。取得していなければ補助対象経費として認められません。

例外として、FA・仲介費用の見積額が前掲のレーマン表で算出される金額以下であれば、相見積が不要になります。ただし関与専門家選定理由書の整備が条件で、見積書に最低報酬額の記載がある場合は相見積の提出を求められます

3. M&A支援機関登録制度に未登録の業者

FA・仲介費用は、M&A支援機関登録制度に登録された業者による支援のみが補助対象です。要件確認は交付決定時に行われます。未登録の業者に依頼した場合、報酬は全額自己負担になります。契約前に登録の有無を確認してください。
当事務所は、M&A支援機関登録制度に登録された業者です。そのため、M&Aそのものに対する支援と、M&A補助金の申請サポートを一貫してご支援させていただくことが可能です。

4. 成約しなかった場合の扱い

補助事業期間内にクロージングまで至らなかった場合、補助上限額は300万円に変更され、原則としてデュー・ディリジェンス費用のみが補助対象となります。売り手側は企業概要書やマッチングプラットフォーム掲載などの実績を示す必要があります。着手金や月額報酬を支払っていても、成約しなければ補助されない可能性がある点は、資金計画に織り込んでおいてください。

16次公募のスケジュール

公募要領の開示2026年9月4日(金)
申請受付期間2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00
補助事業期間2027年1月下旬から14か月以内(予定)
申請方法Jグランツによる電子申請のみ

申請にはGビズIDプライムアカウントが必須です。発行までに1〜3週間かかります。締切に間に合わなくなる最頻出の原因がこれです。検討を始めた時点で取得申請を済ませてください。

専門家活用枠には、買い手支援類型・売り手支援類型のほかに、買い手向けの100億企業特例(補助上限2,000万円)と、小規模売り手支援類型があります。それぞれ公募要領が分かれています。

当事務所の対応と料金

当務事務所はM&A支援機関登録制度の登録機関です。譲り渡し側専任のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)として支援します。仲介型ではないため、買い手と売り手の双方から報酬を受け取ることはありません。

項目金額(税別)
着手金10万円
月額報酬5万円(上限6か月)
中間金なし
成功報酬譲渡価額の5%
最低手数料100万円

上記はM&A支援そのものの報酬であり、補助対象経費に計上できます。補助金の申請支援料は別途で、こちらは補助対象外です。

行わない業務も明示しています。確定的な企業価値評価(バリュエーション)、デュー・ディリジェンスの実施、紛争交渉の代理、税務助言は取り扱いません。これらが必要な場面では、公認会計士・税理士・弁護士と連携します。

一方で、M&Aに伴う許認可の承継手続きは行政書士固有の領域です。建設業、運送業、産業廃棄物処理業、飲食業、宅建業などでは、事業譲渡や株式譲渡に伴って許認可の承継・再取得が必要になります。公募要領でも「許認可等申請費用」が行政書士への委託費として補助対象経費に挙げられています。ここを見落としたままクロージングを迎えると、譲受後に事業を継続できない事態が起こり得ます。

まとめ

  • 費用は①M&A支援費用(補助対象)②補助金の申請支援費用(補助対象外)に分かれる
  • ①の相場はレーマン方式で決まる。基準が譲渡額か移動総資産かで金額が大きく変わる
  • 16次公募の補助率は買い手2/3・売り手1/2または2/3、補助上限額600万円、補助下限額50万円
  • 譲渡価額2,000万円なら実質負担は47〜70万円程度が目安
  • 交付決定前に専門家と契約すると、報酬は全額自己負担になる
  • 有償での申請書類の作成は行政書士に限定されている

16次公募の申請受付は2026年10月2日から11月6日17時までです。GビズIDの取得期間を逆算すると、検討に使える時間は多くありません。

自社が売り手支援類型の補助率2/3に該当するか、想定される報酬総額と実質負担がいくらになるか。初回のご相談は無料です。オンラインで全国対応しています。

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